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胃腸科コラム・広報誌 COLUMN

胃腸とこころ 番外編 お正月とお酒 ~お酒に罪はない~

2014.01.01

胃腸とこころ 番外編

財団法人 防府消化器病センター 研究所長 岡崎幸紀

 

お正月とお酒  ~お酒に罪はない~

   お正月はお屠蘇に始まり、お酒を飲む機会が大変多くなります。したがって、仕事始めの頃になると、酒を飲み過ぎた、はては酒にやられたと訴えておいでになる方を多く拝見します。
 確かにお酒を飲んだ後には、吐き気がする、むかむかする、胃が重い、食欲が無い、体がだるい、などの症状を訴えられます。いわゆる悪酔い、二日酔いで、他人ごとではなく、代々の酒飲みの伝統を継ぐ私自身も、かつては何度も経験したことではあります。
 胃腸の研究に携わっている関係上、酒の胃腸に関する影響については、大学で後輩とともに研究したことがあります。結果として、通常に私達が飲んでいる日本酒、ビール、ワイン、水割り程度で、胃腸の粘膜に影響を与えることはまずありえません。10%台のアルコールでは、粘膜は赤くもなりません。ただし、ウオッカ、ジン、テキーラなど、火をつければ燃える程度になりますと、粘膜にも影響があらわれてきます。
 年末年始のお酒は、日本酒やビールなどが圧倒的であるのに、胃腸の症状が多くみられるのは何故でしょうか。
 理由は、1に体質、2に体調です。
 お酒の主成分のアルコールは胃腸で吸収され、肝臓に運ばれてアセトアルデヒドという中間代謝物となり、ついには糖と水に分解されます。アセトアルデヒドは脳を刺激し、最初は感情が緩やかになり、楽しい人、怒る人、泣く人が現れます。しかし、濃度が高くなると脳の働きを麻痺させて、歩けなくなったり、気分が悪くなり、さらには意識がなくなり死に至ることもあります。
アセトアルデヒドの分解酵素は、体質つまり遺伝に左右され、欧米人はほぼ100%が高度の能力、日本人は50%が高度で40%前後は中間、数%はお酒が全く飲めない方で、無理に飲ませますと亡くなられる危険性があります。この体質は、現在では簡単に検査できます。
 また、肝臓の大きい人ほど、アルコールの代謝機能が良いという説もあります。大きい人が酒に強く、女性よりも男性が強いというのが理由のようです。
 疲れや睡眠不足は体の代謝機能を低下させ、肝臓の機能にも影響があります。お酒をたくさん飲む際には、その日のコンディションの把握が大切です。
 アルコールの分解には、少なくとも30分以上を必要としますが、急速にかつ量が増えれば血中のアルコールも中間代謝物も蓄積され、長時間作用が続きます。駆けつけ3杯はおろかなこと、弱いお酒でも長時間飲めば同じです。
 お酒をゆっくり飲めば、この分解の時間を助けます。そもそも楽しいときは余裕をもってゆっくりと飲まれますが、不快な時、怒っているときは急速にそしてがぶ飲みと言うもっとも悪い状況になります。
 年末の連続の忘年会で、不規則になった生活と食事で体調が崩れ、肝臓の働きが低下し、そこへ正月のお酒を長時間飲むことになれば、当然の結果が訪れます。
 お酒が悪いのではなく飲み方の問題で、自分の体質を知り、体調を把握するという飲む人の心がまえが大切です。お正月は楽しいお酒で過ごせるように。

 

財団法人 防府消化器病センター

研究所長 岡崎幸紀

 山口県防府市の新聞 防日新聞に連載中!

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新聞社名:防日新聞社 山口県防府市寿町1-2

掲載新聞:防日新聞 第6317号 平成25年10月22日掲載

項目   :胃腸とこころ 番外編  「お正月とお酒 ~お酒に罪はない~」 

著者   :財団法人 防府消化器病センター 研究所長 岡崎幸紀 

       日本消化器病学会名誉会員・指導医

       日本消化器内視鏡学会功労会員・指導医

 

 

財団法人 防府消化器病センター 防府胃腸病院

所在地:山口県防府市駅南町14-33 (山口県の中央部 瀬戸内海に面した街)

診療科目:

消化器外科、消化器内科、内視鏡外科、内視鏡内科、疼痛緩和内科、胃腸外科、胃腸内科、外科、内科、放射線科

 

 ※ 財団法人 防府消化器病センター 防府胃腸病院は、山口県防府市(防府市役所前)にある消化器専門の病院です。

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