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胃腸科コラム・広報誌 COLUMN

Dr.岡崎の胃腸とこころ 1 胃は口ほどにものを言い!(急性胃粘膜障害)

2013.10.22

胃腸とこころ 1

財団法人 防府消化器病センター 研究所長 岡崎幸紀

 

胃は口ほどにものを言い!  急性胃粘膜障害

 28年前、山陰の総合病院に赴任していた時のことである。午前2時頃に指導していた研修医の電話で起こされた。「先生、おなかがものすごく痛いんです。吐き気もあります。」状況が捉え難いので、「すぐにタクシーで病院に来なさい。」と指示した。深夜の救急室に行くと、虫垂炎、腹膜炎に似た症状ですが腹部の所見が異なります、との当直医の報告があり、当人はうんうん呻っていた。診察すると、おなかの上部を押さえるとひどく痛がるが、腹膜炎のような硬さはない。念を押したが思い当たることは無いと言う。
尿や血液の検査にも異常が無いので、思う所があり内視鏡検査(いわゆる胃カメラ)を行ったところ、出口の方のおよそ胃の半分近くの粘膜が赤く腫れ、中が狭くなり、点々と出血し見るからに痛々しい。当時、診断が確立されつつあった急性胃粘膜障害という激しい症状の胃の病気であり、原因のほとんどは心のストレスであった。
検査後、病名を告げ、何があった、と言うと本人も観念し、痛みを我慢しながら話し出した。大学は関東北部で、学生時代から付き合っていたその地の女性がおり、卒業前に両親に結婚の許可を求めたが、この地にはこの地の慣習等があり、他の地からの嫁はだめだ、と旧家の両親は頑として認めてくれなかった。以来、3年がかりで頼んできたが許可はでなかった。彼女もいい歳になり両親からも嘆かれ、昨日、二人で最後のお願いをしたが許してもらえず、肩を落として泣きながら夜行列車で帰る彼女を見送って間もなく、強い痛みがきた。
さて、治療であるが、原因を取り除くことが第一である。両親を呼び出し経過を説明した。最初は渋っておられたが、そこまで思っているのであればと、一人息子の結婚を了承された。そのことを伝えると、痛みは急速に軽快した。
胃の出口のあたりは前庭部というが、食物を押し出すために強く収縮する。しかし、心理的ストレスが加わると緊張が高まり異常に収縮が強くなり、そのため痙攣が起こり、さらに血管を圧迫し血液の流れがわるくなり、非常に強い痛みと独特の胃の粘膜障害があらわれる。
本人は言わなかったが、内視鏡で観た胃の像が理由を教えてくれた。胃が口ほどにものを言ったのである。

財団法人 防府消化器病センター

研究所長 岡崎幸紀

 山口県防府市の新聞 防日新聞に連載中!

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新聞社名:防日新聞社 山口県防府市寿町1-2

掲載新聞:防日新聞 第6317号 平成25年10月22日掲載

項目   :胃腸とこころ 1  「胃は口ほどにものを言い!」  急性胃粘膜障害

著者   :財団法人 防府消化器病センター 研究所長 岡崎幸紀 

       日本消化器病学会名誉会員・指導医

       日本消化器内視鏡学会功労会員・指導医

 

 

財団法人 防府消化器病センター 防府胃腸病院

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