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胃腸科コラム・広報誌 COLUMN

Dr.岡崎の胃腸とこころ 5 空港で吐血した新婦(急性出血性胃潰瘍)

2014.01.21

胃腸とこころ 5

財団法人 防府消化器病センター 研究所長 岡崎幸紀

 

空港で吐血した新婦  急性出血性胃潰瘍

  ある日の夕方、空港から若い女性が血を吐いたので、救急車で送ります、との連絡が入りました。食道や胃の病気で血を吐くことを吐血と言いますが、若い女性では稀です。
緊急入院後、胃内視鏡検査(いわゆる胃カメラ)を行いますと、胃の中央のやや奥の後ろ側に浅い潰瘍があり、中央に血管がありそこから湧水のように出血していました。ただちに、内視鏡を通して、特殊な針で血管の周囲に薬液を注入し出血を止めました。
さて、若い女性には稀な急性出血性胃潰瘍の原因ですが、ほとんどが心のストレスで、時に薬の副作用があります。
薬の服用の有無を尋ねましたが、ご本人は妊娠を考慮し、一切服用しておられませんでした。何か心配ごととか気がかりはありませんか、と聞きましたが、一切ありません、とのことでした。何となく屈託のある表情でしたが、新婚旅行から帰ってきた空港で吐血した精神的なショックであろうと思っていましたが、1週間を経ても表情は変わりませんでした。1週間目に、つきっきりであったご主人が勤めに出られましたので、何か心配事があるのではありませんか、もしそれが続くと、また出血する可能性がありますよ、とお話ししました。すると、思い切ったような表情で、話しを始めました。
1年前に見合いで結婚がきまり、その後は楽しい婚約時代でした。当初、主人の両親とは別に住むことに決まっていたのですが、結婚式の2か月前に、主人の両親が同居したいと言いだし、主人もその方がいいだろうというので、釈然としないながらも受け入れました。その後は、式が近づいたのでそちらに気を取られていました。2週間の海外への新婚旅行で、1週間目は大変楽しかったのですが、2週間目に入り帰国したらかなり家風の違う主人の両親と一緒に住まなければならない、と考えると憂鬱になってきました。だんだんと食欲が無くなり、時々締め付けるような痛みをみぞおちに感じました。症状が徐々に強くなり成田空港から羽田空港へのバスでは吐き気が始まりました。当地の空港についてロビーに出てほっとした途端に吐いてしまいました、とのことでした。
ご本人と相談し、まずご主人に話しましたところ、少し頼りなく見えていたのですが意外に甲斐性があり、妻に対し配慮が足りませんでした、私が話を決めますと言われ、両親と話し合われ別居となりました。ご本人も見舞いに来られたご両親に、わがままを申して申し訳ありませんが、重荷に感じますのでしばらく猶予を下さい、と詫びられました。
薬の効果もあり1か月で治癒し、晴れ晴れとしたお顔で退院されてゆきました。

 

財団法人 防府消化器病センター

研究所長 岡崎幸紀

 山口県防府市の新聞 防日新聞に連載中!

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新聞社名:防日新聞社 山口県防府市寿町1-2

掲載新聞:防日新聞 第6317号 平成25年10月22日掲載

項目   :胃腸とこころ 5  「空港で吐血した新婦」  急性出血性胃潰瘍

著者   :財団法人 防府消化器病センター 研究所長 岡崎幸紀 

       日本消化器病学会名誉会員・指導医

       日本消化器内視鏡学会功労会員・指導医

 

 

財団法人 防府消化器病センター 防府胃腸病院

所在地:山口県防府市駅南町14-33 (山口県の中央部 瀬戸内海に面した街)

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消化器外科、消化器内科、内視鏡外科、内視鏡内科、疼痛緩和内科、胃腸外科、胃腸内科、外科、内科、放射線科

 

 ※ 財団法人 防府消化器病センター 防府胃腸病院は、山口県防府市(防府市役所前)にある消化器専門の病院です。

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