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胃腸科コラム・広報誌 COLUMN

Dr.岡崎の胃腸とこころ 3 課長の顔を見ると!(過敏性腸症候群)

2013.12.04

胃腸とこころ 3

財団法人 防府消化器病センター 研究所長 岡崎幸紀

 

課長の顔を見ると!  過敏性腸症候群

  ある年の秋、大学病院の胃腸専門外来に、公的機関の課長補佐である37歳の男性が訪れた。半年前から下痢が始まり、だんだんひどくなって最近では一日10回くらいになったとのこと。数カ所の医院や病院に受診したが原因も分からず、治療を受けても全く治らない。何とかしてください、と訴えられた。
下痢が半年も続いたにしては、体の状態は悪くない。診察ではおなか全体に押さえる時に軽い痛みがある以外に異常はない。
そこで、検査を進めながら、下痢の状態を詳しく聞いてみた。何とかしてくださいと言われる割には話の歯切れが悪く時間がかかる。毎回20分ぐらい、根気よく話を聴いた。当初は柔らかい便であったが、ひと月もすると少量の水のような便がガスとともに頻回にあるという。さらに、詳しく尋ねると、朝目覚めると1回、朝食前に1回、朝食後出勤前に1回、30分要する電車は途中下車して駅のトイレへ、会社につくとまたトイレに、朝礼が終わると必ず1回、以後勤務中少なくとも2時間ごとにトイレに通うという。ところが、午後2時以降になるとぴたりと止まる。休みの日は3~4回とのことである。
検査には異常が無かったから、心理的ストレスによる大腸の過緊張の状態、病名として「過敏性腸症候群」の高度の症状と考えた。ストレスの原因を突き止める必要があり、さらに追求した。
半年前に、人事異動で新しい課長が着任した。この課長は優秀と評判であり確かに切れる。しかし、部下には厳しく、無理難題が多い。直属の部下であるが、課長に会うとひどく緊張する。面と向かうと思わずトイレに逃げたくなった。以来、下痢が始まったとのことである。
治療であるが、薬剤は効果が無く、原因を取り除くしかない。2人の上司の部長に来ていただき状況を尋ねたが全くご存知なく驚いておられた。2人とも優秀で、特に補佐はまじめで信用されているとのこと。どちらかを配置転換できないか、と相談したところ考えてみましょう、とのことであった。
その後ひと月ぐらいして来院されなくなった。気にしていたところ、半年後の他の病院での健診の際に当人が目の前に座った。ニコニコして、その節はお世話になりました、と挨拶された。唖然とした思いで、その後どうしました、と聞くと、「課長が新プロジェクトのために引き抜かれ栄転しました。」とのこと。下痢は急速に軽快したそうである。部長は優秀な部下を失わなかった。
大腸のストレスによる病気は、経過が長いので本人も他人も原因に気付かないことが多い。時間をかけての問診が唯一の診断と治療の方法である。
 

財団法人 防府消化器病センター

研究所長 岡崎幸紀

 山口県防府市の新聞 防日新聞に連載中!

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新聞社名:防日新聞社 山口県防府市寿町1-2

掲載新聞:防日新聞 第6317号 平成25年10月22日掲載

項目   :胃腸とこころ 3  「課長の顔を見ると!」  過敏性腸症候群

著者   :財団法人 防府消化器病センター 研究所長 岡崎幸紀 

       日本消化器病学会名誉会員・指導医

       日本消化器内視鏡学会功労会員・指導医

 

 

財団法人 防府消化器病センター 防府胃腸病院

所在地:山口県防府市駅南町14-33 (山口県の中央部 瀬戸内海に面した街)

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消化器外科、消化器内科、内視鏡外科、内視鏡内科、疼痛緩和内科、胃腸外科、胃腸内科、外科、内科、放射線科

 

 ※ 財団法人 防府消化器病センター 防府胃腸病院は、山口県防府市(防府市役所前)にある消化器専門の病院です。

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